ハチミツ

椎葉村をよく訪問される方から特産品のハチミツをいただいて以来、椎葉のハチミツが大好きになった私は、椎葉村訪問の際にはぜひ実際にハチミツを採る子を見学し、現地でハチミツを味わってみたいと思い続けてきました。念願かなって椎葉村を訪問した私は知り合いに頼み込み、ハチミツ採り名人の尾川さんにお会いさせていただきました。

尾川さんのお宅を訪問した際には、ご自宅の裏手に置かれたミツバチの巣箱を見せていただきましたが、残念なことにこの巣箱はスズメバチに襲撃されてしまい、さらには巣の中にスムシと呼ばれる害虫がわいたため全滅していました。椎葉のハチミツを名人宅で味わうという私の希望は叶いませんでした。

しかし尾川さんから伺ったハチミツに関するお話は非常に面白いものでした。春になるとミツバチの巣箱をあちこちに置くこと、別に森の奥でなく道路脇でも人通りが少なければ構わないこと、ミツバチを巣箱に呼び寄せるために箱の中にミツロウを垂らしておくこと、しかし箱が汚いと害虫がわくのでバーナーで焼いて消毒しておくこと、暖かい時期は巣が柔らかく、取り出すと崩れてしまうため、涼しくなってくる10月ごろになってから巣箱から巣を取り出すこと、ハチの巣にはハチミツがこぼれないための蓋のようなものがあるので、それを刃物で削りとり、目の細かい網の上に置きハチミツをしたたらせて集めること、そうすると遠心分離器を使わなくてもきれいなハチミツが集められること、巣箱の中から巣を取ってもミツバチは人を攻撃せず、箱の周りにたかっているだけとのこと、そのため尾川さんは巣を取った後は手でミツバチたちを再び箱の中に戻してやるとのこと、巣を取る際にも半分は箱の中に残しておき、ミツバチたちが飢えないようにすること、それでもミツバチが飢えるかもしれないので、冬の間は定期的に巣箱を見回り、場合によっては黒砂糖を餌として与えることなど、短い時間お会いしただけにもかかわらず、野生のハチミツを採るための様々な知識を惜しげもなく教えて下さいました。

こんなにハチミツ採りに詳しく、椎葉村のハチミツ生産者の組合であるプロジェクトハニー協議会の会長を務められているにも関わらず、尾川さんはハチミツ採りは「趣味の範囲、商売ではない」とおっしゃっていました。さらに巣箱を使ってハチミツ採りを始めた最初の7年間は、自分が仕掛けた巣箱の中のミツバチがかわいくて、せっかくハチミツの詰まった巣ができたにもかかわらず、取り出すことができなかったそうです。

ハチミツ採り名人の豊富な知識だけでなく、あまりに意外なエピソードを伺うことが出来たため、現地でハチミツを味わうという希望こそ叶いませんでしたが、椎葉のハチミツが一段と好きになりました。

TI

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